主人公は友達も恋人も(そしてたぶん良好な関係の家族も)いない。
だからよくあるミステリー漫画の探偵みたいに、犯人を「紋切り型の善良な市民としての正義」で説き伏せることもない。
型に嵌めた「あるべき幸せな人間」に、主人公自身もなり得ないから。
喜びや悲しみを分かち合うともや恋人や家族がない人が、必ずしも不幸せということでないということ、そしてそれが犯罪の動機として正当化されないことを、整が立証していく。
整はそういう境遇だけど、不幸せでないと断言してるし、犯罪は絶対犯さないから。
ただ、そんな型に嵌めた幸せな人間でない側の整にも、「理解者」がいる。
友達や恋人、良好な関係の家族がなくとも、人が人として、社会に馴染めないなりに社会に参画して生きるためには、「理解者」だけは必要なんだな、ということがよくわかる漫画。
生きづらさを感じていて、この漫画に何か感ずるところがある人は、まずはぜひ「理解者」を作るといいと思う。
整は自分の思いを徹底的に開示する。これを諦めないことから、理解者の獲得のステップは始まってると思う。