冒頭の別離話から、ヒーローマークの 飄々として掴みどころの無いけれど 見た目の美しい金魚の様な(煮ても焼いても食えぬ様)表向きとは裏腹な、心の中に押し込めた想いと ヒロインネッサの気持ちを汲んだ決意を見て取れた。また、2人の会話の言葉の選択の的確さが、この先にある鬱蒼とする物語に 私を易々と引き込んだ。生唾をごくりと飲み込んで2人の間にある空気を読み、何が2人を追い詰めたのか、お互いが答えを知っているのに 核心を突く部分の会話には、相手の感情と思考の在りかを探る言葉を返すという絶妙なやり取りがあって、その間接的な作りの意味を探っていく。お互いが 力不足を感じたために諦めた未来に、当事者でないのに私の胸も苦しくて潰れそうだ。登場人物のキャラクターもよく考えて作り上げられていると感動する。その最たるものがマーク母。貴族の女 としての傲慢さが見える顔つきと髪型だが、服装はフェミニンでエレガント。この相対的なものが母の心中の葛藤をこちらに伝えてくる気がするのだ。彼女の希望と現実を。そしてネッサの姿にもその波及効果を作り上げていた。離婚後1年、母子の姿に、感情に突き動かされてようやく客観的に見ることが出来、真実を悟り線引きする気になったマークだが、彼と、彼の弟にとっては父親の存在が、ネッサにとっては義父と伯母の存在が、マークとネッサにとってはダニーが救いとなってくれて涙を止める要因に相応しいと思った。