手塚治虫先生の死によりこの作品は永遠の未完となってしまいました。非常に残念です。
ルードウィヒ・Bは、史実とフィクションとが入り混じる、ドラマ仕立ての伝記漫画です。ただ ベートーベンの歩んできた道を描くのではなく、彼を狙うフランツやフランス革命以降のヨーロッパの動乱も描くことで、漫画では直接的に表現することのできない音楽の響きを、ベートーベンが生きた時代そのものを、漫画に描き起こさんとする手塚治虫の意欲が伺えます。
18世紀 当時では出てくるはずのない道具や言葉などもちらほら出てきますが、そこは手塚先生おなじみのギャグ要素といえそうです。
私はもう一人の主人公 フランツが興味深いと思いました。ルードウィヒの名を関する人間に恨みを抱き幼きベートーベンに暴行を加えた彼が、戦地で相対する人間を救い、見知らぬ農民の赤子を育てるという両面性を持っているところに、キャラクターとしての魅力を感じました。
そんな彼とベートーヴェントが音楽という軸で交わる漫画の最後のシーンは、ベートーベンの演奏の視覚的な表現が素晴らしいだけに、続きが期待できないのが欲しいほどです。これから2人がどのような結末を迎えていくのか、それを 読者は自分の中で想像することしかできないのが非常に悔やまれます。