大変申し訳ございませんが、この物語のどこにロマンスを感じられるのか分かりませんでした。不幸な身の上のザラをトマスの明晰な頭脳でもって自立させてやるところまでは面白く次の展開を期待しながら読んでいたのですが、物語が訴えてくるのはトマスの悲壮感ばかり。確かに影の部分は濃いほうが幸せの光は強くなるのでしょうが、トマスの立ち直りに関してあまりに突然で呆気なさすぎ。いきなりどうしたの?とザラと共に読み手も困惑しきりです。新しい記憶も消えていっていると本人の自覚があるのに愛しているという記憶が消える可能性を考えると手放しではハピエンに喜べません。少なくとも未来へどう対処するのか伝えておいてくれれば、ホロっとできたのかもしれませんが。