旅先での邂逅や小さな恋を軽やかに紡ぐオムニバス作品
わたせせいぞうらしい透明感あるイラストは、都会的な洗練とノスタルジーを漂わせます
物語は短編の連なりで人物の背景は深く描かれないが、それが逆に旅情や一瞬のときめきを際立たせる
『ハートカクテル』の都会的軽やかさを思わせつつ、『菜』ほどの重厚なドラマ性はありません
しかしその軽やかさこそが、読者に柔らかい幸福感を与える魅力となっています
季節や風景の描写も丁寧で、絵を見るだけでも心が動かされる
ストーリーの深みに欠けるとの声もあるが、これは意図的な空気感重視の演出とも言えます
短編が織りなす断片的な出会いは、日常の中の小さな奇跡を思わせる
ビジュアルと空気感で読ませる、わたせせいぞう流の大人向け恋愛散文画