殺人事件2つ、婚約を巡る話1つ。かつて読んだmimi誌に掲載作と知った。購読の頃から僅かに後ろにズレていて、万里村先生について知らなかった。
周囲が婚期辺りの女性に向ける当時の空気が見事に掬い取られ、主人公の女性の心理、思い当たるフシ多くて、逆に当時読んでいたらより生々しく受け取ってしまったかもしれない。
特に、親の考え方、お見合いや結婚情報サービスの有り様など、時代的にありふれて有ったような話、身近で聞いたような話も挟んできて、情景は我が事の様に迫る臨場感に否応無く包まれてしまう。
その中に、サスペンス劇場。
表題作は連続殺人事件だから、推理小説のような謎の手がかりが物語をくし刺しして、読み手のこちらの気を逸らせない。1巻目同時収録の「イヤリング」は殺人こそないが、ミステリー仕立てに思わせ振りな展開、主人公は、開眼し自立することになる。
2巻目同時収録のブレスレットがモチーフの一部となっている殺人事件は、篠原千絵先生作品を思わせる。
そつなく仕立て上がった、ミステリー選。
ちょっとマンネリで怠けそうくじけそう、自分がダメになっていくのでは、というような自分に、このまま陥りかねない日常に軽い刺激になった。
ストーリーで引っ張るタイプで、華やかさはないが、絵柄が尖っておらず整然と描写している感じ、目に無難なところが逆に、静かに動く犯人像を隠してくれたかも。
「危ないウエディングベル」昭和63年、125頁+125頁。
「イヤリング」昭和62年、66頁 第1巻収録。
「友情のアリバイ」昭和63年、59頁 第2巻収録。