新聞記者のメモを元に構築された物語は、取材現場のリアルな息遣いを伴い、読み手に「事件を生きる」感覚を与える
特に、決起の瞬間に漂う緊張感と、雪に反射する冷たい光の描写には、戦前東京の空気まで伝わってくるかのような細やかさがあります
ただし単なる史実再現ではなく、青年将校たちの理想主義とその理想が暴力として噴き出す矛盾を巧みに描くことで、歴史の冷徹さと人間ドラマの熱を同時に味わわせてくれる
読後には、「もし自分があの場にいたら…」という思考の余白が残り、歴史漫画としての深みを印象づける作品
軽快でありながらも、史実の重みを決して損なわない
まさに“戦前の熱気を手元で体験できる一作”