本作は不倫がテーマとの事ですが、残火が燻った大人たちの「狡さ」の方が際立った作品でした。一瞬で獲物になるか判断し捕食者の目になる坂東、あ~これは厄介な雰囲気だなと。バーテンの歩には転がし上手で誘い慣れた様子を見せるが、昔の恋人 トシに口の中を指でグリグリと弄ばれるとトロン受け全開に。何この人、何なのこの関係?2人だけだったら何処までやってたのと思わせる空気感。淡い期待を抱いて指輪を外して会いに行ったのに、トシに脈が無いと分かると歩に触手を伸ばす軽薄で狡い顔を覗かせる。初めは憂さ晴らしで手を出したのに、歩の男らしさにキュンとし体で落ちて真っ直ぐさに射貫かれる乙女さよ。トシはきっと坂東が指輪を外して来たのを見逃さず、マーキングかマウントをとるかの様に口の中に指を入れたんだろう。俺がお前の一番の理解者だと言わんばかりの言動、お願いされればキスをしてなだめるのに友人を盾にする狡さ。一番坂東を惑わせているクセに「人の道外れた ただの不倫だ」なんて責める。それ、本心?坂東を獲られたくないだけじゃないの?と勘繰ってしまう。歩とトシ、どちらが当て馬か分からなくなる。一番狡くて怖いのは坂東の妻かな。傷心の坂東の心の隙に入りゲイを承知の上で結婚し、縛った。指輪の重みって後々響いて来ますよね… 坂東としても結婚する事で心の平穏を保ち、区切りを付ける手段だったのかも知れないけれど。歩は ただ真っ直ぐに坂東を見つめて愛すのみ。心がやさぐれた狡い大人達にはこの姿が眩しいだろうな。真っ直ぐで馬鹿が付くほど真面目な歩にケジメをつけようと言われ、離れる2人。数年後 大人になった歩は眠り姫をお迎えに… あの日、不意打ちにされたキスをお返しで。凄く爽やかなハピエンでした。西本作品は3作目ですが、ラストを明るく描き過ぎる傾向なのかなと… 大人になった歩が大学を訪れるシーンはP.204の「お迎えに上がりました」まで顔出ししない方が効果的な演出だったのではと思いました。そして余白を活かして余韻が残る終わり方をしたら、グッと心を掴まれてキュンとなったと思います。後半に行くに連れ、歩の顔に意志が宿り男前になっていました。本当に表情を描くのが上手いな~と。そして肉体美の素晴らしさ。新作よりもこの頃の骨太の絵の方が好きです。骨格、筋肉、太い指… BLは男を愛でる教本です! 欲を言えば 歩が自分の指輪でプロポーズするシーンが見たかったな?