画力もすごい。どこにも雑さがないから滑らかにじっくり隅々まで読める安定の展開。なのにありきたりさの無い池野恋先生の表現がそこかしこにしっかり滲み出てる。情報量に乗せてる文字数が過不足無く、特段奇をてらわない表現方法なのに印象に残る効果的なビジュアルを挟んで見せてくれている。他の先生の作品の絵も巧い。言葉チョイスの感覚に嫌味がなくて、それでいながら盛り込まれた内容に、お人柄 への親近感を誘い、さりげなく人を引き込む説明力がある。
編集の担当者にはいろいろな方が居て相性様々なことは、漫画家の先生方の苦労話としてあちこちで読んだことがある。池野先生ご当人の努力や、漫画が好き、絵を描くことが好き、等々も触れていながら、やはり初代担当の方とのエピソードこそ、池野先生のデビュー以降を導き?先生の作品の性格を形成?の大きな要素と感じ入った。一緒に歩んだ7年間の中で示された沢山のアドバイス、作品名をも含むアイディア、すごいコンビネーションを見させてもらった。先生ご当人の努力や創意工夫も当然非凡、1日24時間フルに使ったと思われるバイタリティも驚異的。子どもの頃から創作物というのも驚かされる。「絵」を軽視されサイン色紙何十枚の依頼者が「ちゃちゃっと」という頼み方したエピソードは、そんな認識されて、読んでるこちらも残念に思ってしまった(気軽にちゃちゃっと描く先生はいる)。他のアーティストのような遠慮をしてもらえない、漫画家先生方の認知度の低さを、当人に代って悔しく思った。
幼少期の環境、初投稿にして準入選、即1979年りぼん誌お正月大増刊号デビュー、初連載と、一見トントン拍子。その順調に上げていく実績の中でも、とてもちても力を尽くしてる。それもわかる。
上巻「M.Y様に捧ぐ」(1979年受賞後初作品で池野先生はこれをデビュー作品と捉えている。りぼん1979年5月大増刊号)、下巻「勝負あり!」(りぼん1980年10月号)、初期作品収録。乙女ちっく画風が懐かしく漂う。
2023/7/25追記。他の先生方の絵も巧い、と書いたが、先生方からお借りしたカットが使われていた。池野先生が真似て描いたのかと思っていた。