この物語のヒロイン、ロウェナは生まれたときからずっと運命にもてあそばれてきた。
けれども、たったひとつの幸運が彼女を終始細々と救ってきた。
出逢いって物凄い力を与えるのだなぁと、そんな話。
ずっと好きな人、何者であっても好きな相手、私の大好きなパターンのロマンスなのでとても楽しんだ。可愛らしいもとなおこ先生の絵が、一生懸命生きているヒロインに、運命は決して最後は見捨てやしないとばかりに、光を差し掛ける。つくづく、人は、奇跡のような出逢いによって、光輝きもするし、魔に魅入られたように辛い目に遭わされたりもするのだと、感じさせる。あの出逢いなかりせば、と思うと、人が人と出会うことのすごさを考えない訳にはいかない。人に恵まれもし、人(エドワード)に利用されもし、その時その場に人の組合せが人生の扉を決定付ける。
舞台がくるくる移るので大変だったろうと思うが、貴族は貴族、というバックグラウンドが明白に描かれているのは、重苦しく表現しておらずに、線が洗練されているからではと思う。
絵の丸みが時々同じところで形作ってないように見える。
角度が変わると同一人物に見えにくくなる。
盛り沢山の、人生を左右するイベントが、しみじみとした場面に読み手の心をとどまらせず、次なるイベントが起こる度に、こちらはせき立てられるようにヒロインの新しい試練に付き合わされていく。それらの果てにマーカスとの平和が来るので、省くことも難しい怒濤の畳かけストーリー進行。
余りに出生の秘密絡みや寝食の恩人絡みの人間があれこれ出入りし、一つ一つにドラマの奥行きまで頁が割けなかったのが残念。原作がそうだから、なのだろうが、コミック一冊に収録する内容としてはパンパンだ。
それに何より、見守りを全うして退場する大恩人である侍女ネッサ、出番の終わりが素っ気なくて、物語上の貢献度に見合ってはいない。カーテンコールに出してくれてもよかったのに(読み直したらひっそりと居た。初めから最後まで黒子に徹したネッサさん。どうかお幸せに。)。
という訳で、辛口で申し訳ないけど上述の諸点から星は4.2位のつもり。