このレビューはネタバレを含みます▼
至極当然の想いが溢れた物語に感動と言いたいのだけれど、デイヴィッドの行動がブレーキをかけた。何度も流産しているリアだから今度もダメだろうと考えて期待すればサイモンの二の舞になると躊躇しているのか、ただ逃げているのか、両方か、ハッキリしない態度に腹が立ちました。男性側はしばらく考えたいで済むと考えているようだが、女性のおなかの中では育ち続けている、待った無しだという事を医師の彼が分からないはずもないのにと思うと、過去にどんなことがあったにせよ目の前の命を救うための行動を迅速に起こせていない事に怒り心頭です。デイヴィッドの甘えから招いた事態である事からも逃げを打っていて、もう怒りに体が震えました。しかし、目を見開き、前を向いたのです。2人の間の子供を誕生させるために行動したのです。やっとかーっ!と読んでいる人は思ったはず。酷い男に書いておいて、前向きになったらひたすらにというギャップ、作者の意図にまんまとハマったのです。ただ、冒頭では、キャリア志向のリアを阻害したデイヴィッドの登場に話の筋はそっちではないと進んでいくのには少々拍子抜けしたのも事実。まさかこんな主軸とは・・・。作中ではリアの沈んだ顔ばかりが描かれる物語に読み手もどんどん暗い気持ちになっていく、息をのみ、拳を握り歯を食いしばって。そして、誕生した彼女を腕に抱く場面では、私の両手にもその重みを感じるかのように手を差し出していました。引き込まれました。