個人的に大好きな記憶喪失物語。事故で記憶を無くしたヒロインは、彼が追いかけてくるのをイタリアで待っていた。けれど、彼が来る前に不運にも記憶を失ってしまっていた。妻だと嘘をつくヒーローにとっては、彼女を退院し引き取る 正式な手段が無いから仕方ない。誠意があるなら、オーストラリアに返すべきだったのだ。彼女を傍に置いておきたいのなら、自らがオーストラリアに行くべきだった。そして、献身の努力と看護で信頼を取り戻すべきだったのだ。それが出来ない時点で自己中心的と言わざるを得ない。彼女にしてみれば不安しかないのだから。それでも、作中には、欺瞞とはいえ ヒーローの献身は描かれていた。嘘に怯えながらも。また、セリフと思想が真逆な事が面白い。信じてくれと言葉にしながら、心では信じてもらえないと分かっていたという。希望と期待とが入り混じりながらも、付く傷が浅くすむように 自己防御しているかのような作りが 読み手の感情を複雑にしているところだ。けれど、人を傷つけておいて自分は蚊帳の外なんて都合の良い事が 罷り通る訳はない。許されないと分かっていても、彼女に会うんだと やっとオーストラリアまで ボロ車に乗って来るヒーローの可愛い事っらたない。和解した時には、良かった良かったと 頭をなでなでしてあげたい気分だった。