キャラの内心のバタバタが今回もストーリーに巧みに生かされ、そこが天乃忍先生作品の持ち味になっていると感じる。
手書きされたメタ認知的な状況俯瞰の一言添えも、笑いを誘う。緩衝材でもあり、点火役でもあり、黙することでサポートする優里の存在も、ラストゲーム以来の天乃先生作品にある意味お馴染みの存在。
雛の家お泊まりのシーンは作品全体の中では構成上絶好調のバランスに、危うく、そしてその危なっかしさを生かして、笑いとほんわかムードがギュッ込められて出色かと。
漫画の面白みはリアリティのない設定にリアリティを体感出来る点にもあると思う。楓の正体に関するあれこれもさることながら、日常の授業風景を読み手にヒヤヒヤさせるエピソードで揺さぶるような陳腐なもので埋めなかったのが、ドラマ作りの腕を思わせて素晴らしい。
雛と楓の心境の推移もとても自然だったので、新展開に入っても安定品質。
二人の歩みには、ときの経過によって次第に強固に結び付いていく美しい関係進化があって、それも来るべき所まで来た感がする。
大波乱が欲しい人よりも、少しずつ溶けていくわだかまりと共に信頼や恋愛感情の醸成を見届けたい人向きの、微笑ましい話。
欲をいえば、じいさんとの確執は、大きいのだろうが視覚的に薄かった。
あとクラスメートや部活仲間達が、教室メインではない場面が多いにしても、関わりも本当にあっさり描写だった。
絵がかわいいので仕方がないが、最後の回くらい男性ぽさをもう少し見たかった。
それまでの流れを壊したくなかったんだろうとは推測するが、ギャップもまた見たかった気がするのだ。
Reverse X Rebirthだったんだ、と、改めて面白がれた。