出産日が同じだった新生児の取り違えによってすれ違った男女が復縁となるお話です。題材がかなりの重大事なのでどんな風に解決へと導かれているのかを中心に読みましたが、復縁ありきの好都合展開はこの重要題材に一石を投じるようなものではなかったのが残念でした。子供の状況説明や子育て環境についてを主軸に進んでいくのは仕方ないとしても、ヒーローとヒロインの出会いから別れ、そして復縁へとのプロセスにトキメキが伝わってこず、どちらかというと淡々とした事務的ですらあるような始末で、人物の所作の切り取りにも工夫が欲しかった感想です。ヒーロー前妻の作り上げた庭園はそれなりに完成された芸術性の高い冷たく豪華であることは伝わりましたが、肝心のヒロインの希望する(求める)感性の光が具現化されておらず、想像するだけになっていてかなり残念です。お互いに一目惚れだけで引っ張られた関係は情熱も薄く「子供の為だから」という印象からは脱却できませんでした。