仕組まれた醜聞は、よかれと思って弟が企てた。
家が隣同士、本来素敵な組み合わせだが、ヒロインに結婚する気がない。
「聖」職者が、中には悪いのが居るということをストーリーに用いているのだが、身震いするほどやなやつなのだ。それなのに、悪い人相しておらず、その職に在ることをもって他人を欺けるんだろうと思うと、素行不良として職を取り上げてしまってないのが些か悔しい。その先でも面倒を起こしそうで。
さて、お育ちのいい公爵が絵に滲み出ていて、領地での豊かな自然や庭の感じも楽しい。ロンドン社交界に舞台を移しての、「貴」族たちの品行方正の無さとの対比が面白い。頭文字A、B各3人の弟妹達の躾の悪さも、過剰演出の嫌いはあるが、ストーリーのかき回しに一興。
視覚的によく表されていて流石。
喪中なのに云々の、世間のルール逸脱設定、「自由」 を是とするテーマに公爵が寄せられて小気味良い。貫いているものに忠実な物語展開なのが、本作のメッセージ性強まっている。
しかし、合意の存在とプライベートが表面化していない1件の「女性不利」なエピソードと、それとは対極的に、そこになにも起こらなかった真実がありながら、コトが明るみになると「当事者責任」を取らざるを得ないエピソード。
巧みな両エピソード好対照がお見事。
物事の本質がくっきりしていて、それでいてヒロインの心境に至る状況に、かつてがんじがらめだった女性への素行に関する考え方を思う。社会のルールとして頑なに抱えていたその時代性へのもどかしさを、読んでいるとつい覚えさせられるストーリー。
一方、その社会通念故に、彼がヒロインに真摯に向き合うという環境に置かれた、皮肉(?)とも御都合(?)とも取れる展開は、なんだかこのテの、話の成り行き自体に既視感がある。
女性に気まずい思いをさせてはならない、の 一連の場面良かった。