膨大な個人情報を元にAIが緻密な恋愛シミュレーションを行い相性を数値化する恋愛アプリに翻弄される若い男女の物語。占いアプリの進化形とも言える本アプリの需要は確かにあると思うが、算定方式がブラックボックス化された恋愛スコアは眉唾モノで信頼に値せず、社会現象になるほど爆発的に普及するとは到底思えない。自分の性癖や価値観は、たとえ家族や親しい友人や恋人であっても、曝け出すのは抵抗がある。本アプリに個人情報の活用を許可すると、ほとんど面識が無い人達に対しても、プライベート情報がダダ漏れになる。非常に気持ち悪い。アプリの結果を元にした誹謗中傷が溢れ、悪質な苛めの温床になりそうだが、仮に情報の悪用が社会問題化したとしても、恐らくアプリ開発会社は責任を取れないだろう。せいぜい関係する登録者を垢バンするくらいしかできない。情報は一度漏出すれば取り返しがつかない。運良く記録を完全に消去できたとしても、記憶は残り続ける。1巻の終盤で、本アプリの普及によって離婚率や家庭内暴力の発生件数が減少したといった効果がさらりと示されていたが、とても胡散臭く感じた。異世界モノのようなファンタジー作品やギャグ色が強いコメディ作品の場合、設定にリアリティを求めるのは無粋だと理解しているが、現実世界に近未来設定を盛り込んだ本作の場合は、もっと設定を練らないとダメだと思う。