おそらく、他のレビュアーさんと逆で元々谷崎潤一郎氏が好きで読んでみました。サンプル部分で(原作改変的な)嫌な予感満載だし、レビューコメントで察するところもあり、自爆するために読んだと言っても過言ではありません。そもそも、原作が明治時代の男尊女卑の極みから団塊世代にかけての、自分本位な中年男視点なのです。そして、原作の攻め役はヒロインとはもう少し年齢差があり、もっとしみったれた冴えない男です。しみったれたおじさんが若くて綺麗なお嬢さん(=受け)に一目惚れして、もてあそばれて、経済的にも社会的にも人間的にも辱しめられる遊びを楽しむのが『痴人の愛』です。これは、悪のエンタメです。このおじさんはMプレイしてほしいおじさんなんですよ。主導権を握ったM。だから、このタイトルなんです。そう思うと、全てが納得できると思います。タイトル通りすぎて私は笑ってしまうけど。BLなので、皆さん作中のキャラ間に『愛』をお求めのようですが、これは愛の物語ではありません。変態の性癖の話なので、愛はないんです。また、原作を知っているとハピエンにはならないのは承知の上ですが、逆に改変によってエンタメ度が下がっています。原作よりもハピエン寄りに近付けようとしたのか、冒険せずにお茶を濁したのか、それによって悪のエンタメとしても中途半端になってしまった。原作(谷崎潤一郎氏)のテーマをご理解いただけなかった。そこが残念の極みです。