事件らしい事件は起こらない。どんでん返しもないし、大団円でもない。谷中のカフェ、英国上流階級出身の青年、亡妻の連れ子との同居、田舎出身の女子大生、口の悪い霞が関エリートなどなど、実はかなり非現実的な設定。それでも日常のリアルを感じさせるのは、ちょっとひねりのきいた洒落たレシピがフィクション(でっちあげ)ではなく、よくリサーチされているせいかも。豚肉のリエット、ニワトコ花のコーディアルなど。「事件」は起きないにしても、小さなドラマはあり、巻が進むにつれてそれが積もっていって、この作品の「味」になっているような。小説のコミカライズですが、コミックになって失ったものより、獲得したもののほうがあるのではと思います
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