ネタバレ・感想ありD・キッサン作品 無料お試し読み冊子 KISSAN Collectionのレビュー

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興味津々で来てみたらとてつもなかった
2023年2月23日
200ページを越える「無料」「お試し」版は、 これだけで D. キッサン先生という作家を知れる「小冊子」なんかではない。
ますます豊かな森を見せつけられることとなった。
変わった姫と、彼女に関わり合う人々や彼女の歌に心引かれた雅な男子(貴公子)との平安もの、「千歳ヲチコチ」。あとを引く導入部の上手さ。すぐに購入する気になった。
もうひとつ平安王朝物が納められており、こちらはギャグマンガ。「神作家 紫式部のありえない日々」。笑いを取りに来ているが、ありえない話ではなくて、現代風仕立てというアレンジの妙が、紫式部の作家活動を可笑しく感じさせるもの。何を描くか、というより、どう描くか、に特異な力を感じる。宮中に上がるいきさつだけで既に、この先の彼女の巻き込まれ具合と、書きたい欲の放たれ方に、感心してしまった。
現代高校生物「私立轟高校 図書委員会」は4コママンガと、ゲームキャラ登場させたストーリー漫画とで成り立つ。笑わせよう笑わせようとしてる訳ではないD.キッサン先生の、なんとなくキャラ達の性格に任せたきてれつ過ぎない筋運びが、一般的な高校とは違いながらも、ひょっとしたら実在すると感じさせるように作品内高校生活を擬似体験させてもらえる。
「ゆり子には内緒」ーー天使と悪魔、とりつかれたか契約ゆえなのか。絵や虚構性には不思議な登場人物達固有の理屈と彼らなりの動機などが飛び交い、力ずくでストーリーが進行する。なんかわからんけどわかった気になる恐るべし雰囲気効果。。。
「矢継ぎ早のリリー」、架空の国の、特殊な立場と力が、守ろうとする対象と理不尽な仕組みとの下でもがくファンタジー。絵がやっぱり分かりやすく、あの頁数で、説明口調がないのに懐の深い重層構造。

いずれもタイトルの付け方ひとつとっても異彩を放っており、印象に残る。絵・展開に親近感や自然な感じがありながらいろいろユニーク、という微妙にいい均衡を保って、大注目の作家と認識。
シーモア(島)で教わった作家、作品。また新たに手を広げられて嬉しい。
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