現実にもフィクションにも存在する話。そしてBL作品にも登場人物の過去やトラウマとして、読み手へのインパクトの与えやすさもあって描かれやすい話が、この作品では真正面から語られています。
秋平の周りの大人たちの罪を目を背けずに描いていて好感を持ちました。
日々のニュースになる事件も、ワイドショーの中で消費されるんじゃなく、自分たちが属している社会全体の問題だと気づけたら良いのですが、当事者意識って簡単には変えられないから、きっとこの作品を読んでいてもどこまでも可哀想ですませられる人も多いとは思います。透明人間は現実世界に沢山いますが、その人自身の能力ではなく、社会が、私達が透明人間を創り上げていることに気づくにはどうしたらいいんですかね。
高校生の誰にも言えない性的志向を抱えながら、片思いの相手である同級生と過ごす学校生活の(表面的には)穏やかな日々。亮太の目線で読むと2人で花火を見たり、屋上で語らうシーンはやっぱり頬が緩みます。その恋の部分がとても重要だと思いました。
どういう着地をするかはもちろん作者さんのみ知ることですが、21話まで読んだ実感としては信頼できる書き手という印象。
まあ2人が手を取り合う未来があったとしても、社会が変わらず沈黙を続けるなら、良かったねで終わるはずはなく、それこそが私たちの現在進行で犯している罪なんですが。