魔族VS人間の長きにわたる戦争が魔族敗北で終結した十五年後。戦時中の記憶がまだ色濃く残っているであろうこの15年という時間。復権を狙う魔族、魔族を根絶やしにしたい人間達の言動、行動が何とも生々しく描かれる。どちらが悪い、どちらが善とはっきりできるものでもない。現実を見ても差別なんてそう簡単に拭い去れるものではないのでスッキリ解決できるものではないのが悩ましい。敗者側の視点なので人間側の行動に腹が立つこともあるけれどそれもこれまでの戦争を思えば…となる。まあ屑もいますがそれはいつでも存在してるし、そういった雑魚はスパッと切り捨てるのでストレスも少ない。戦争のない世界を生きようとあがく元魔族の幹部ベルテと戦争に辟易し勇者に討たれ人間に転生した元魔王エステラの旅路の結末が気になった。旅の過程で出会う魔族や人間との交流もしんみりくる。本当に魔族と人間がともに住まう都市があるのか、そこに希望は見いだせるのか。たまに挟むギャグもいいアクセントになっていて面白い。