あらすじ、それに試し読みで惹かれ
ついに購入、読了
この『フランケンシュタインの男』という作品、知らないままの方がよかったか。
読まないでいた方がよかったか。読み終えてしまった。
主役の空木鉄雄が辿った末路を知ってしまったのだ。
フランケンシュタインの男というタイトルは
主役である鉄雄の事を表している題名である。
フランケンシュタインの怪物、という小説がある。
この『~の男』、劇中では『~の怪物』を基にした映画のみが取り上げられていて
鉄雄そして表紙の血まみれの少女である君影綺理子は一緒にその映画を観ている。
子供らしい誤読をしており、フランケンシュタインは怪物の創造者である博士の事ではなく怪物の名前だと認識している。
この『~の男』ではフランケンシュタイン博士にあたる人物は実は綺理子だ。
フランケンシュタインの怪物ならぬフランケンシュタインの男=鉄雄を創り上げたのは綺理子なのだ。
『~の怪物』は創造者である博士を害する。
『~の男』においての博士、綺理子は鉄雄に対し操り人形を扱うように接し
鉄雄と綺理子は、途中まで共犯関係のように互いに依存し合う。
自分たちを苦しめた子供たちに対し復讐を遂げていく。
その暴力はあまりに魅力的だ。暴力はふるう者にとっては魅力的なのだ。
鉄雄も、復讐した子供たちに対しては省みる事をしていない。
鉄雄と綺理子の暴力は悲劇的な末路を迎える。その事が鉄雄のトラウマとなる。本作の末路へと繋がる。
この漫画『~の男』、SFホラーだと紹介されている。
『~の怪物』が、死体をつぎはぎして作り出されてはいてもあくまで科学の産物である事と同様に、
フランケンシュタインの男も、劇中に何一つ非現実的な事が登場しない。
現実に遭ってもおかしくないのではないかとすら感じさせる。
鉄雄の苦しみや末路は、現実に有り得るのではないかと感じさせる。なんという恐ろしさだろう。
『~の男』は完全なフィクションだ。鉄雄や綺理子の末路は悲惨極まりないが、現実ではないのだ。
読み終えた読者は「劇中のこの人達のようにはならないぞ」と心に誓い生きていかなければならない。
鉄雄のような怪物になるな、綺理子のような復讐者になるな。
たかがホラー漫画といえども、自身の糧とし、勇躍するのだ。
SFホラーと紹介されたのは当時サイコスリラーとかそういう区分が無かっただけかも知れないけどね