語り手のぺみさんは建築デザイン事務所を経営されている『視える人』なのですが、自分が扱った瑕疵物件の怪異でも合理的に説明がつく部分はきちんと霊障と分けて語っているのが好感が持てる。もちろん説明がつかない怪異は怪異として語っています(僕は漫画のオーブの部分は埃の可能性はないのか?と思ったけど。)
語り手が経営する事務所の顧問弁護士による瑕疵物件に関する法律講座があるのも勉強になりました。
個人的にポイントが高いのは、第一話が湿地帯で井戸がある中古物件であるのを知らずに買った施工主とのペみさんとの法律トラブルの話。実話怪談ファンの僕からすると井戸は水神様や精霊が宿る場所なので、そういう土地に中古物件をリフォームしたり、家を新築したりする時は丁寧にお祓いをして扱わないといけない。井戸がある土地でいい加減な扱いをしたばかりに怪異や不幸が相次いだ話は沢山聞いたり読んだりしている。本書の井戸の話も井戸怪談のテンプレ通りになっていて、ぺみさんも不動産や土建の世界で生きていて『井戸の障り』を聞いたりしないのかな?とは思いました。科学的にも、井戸がある土地は水脈はあるし、湿地帯なら尚更軟弱地盤だし、カビも発生しやすいので『よくない土地』になるのですが。
2話目の中古マンション物件の話も、一応施工主も独居老人が部屋で亡くなった瑕疵物件であるのを知っていてリフォームして住んだら怪異が発生したが、その怪異の正体が...と推理小説的な展開になるのが面白かった。
不動産に関わる実話怪談が好きな方々にお勧めします。