このレビューはネタバレを含みます▼
試みは面白いですし、巻末の平井憲太郎氏の文も一読の価値はあり、
内容もある一点を覗いては丁寧で完成度が高く、続刊を期待したいです。
ですが正直、一つの作品として読み応えがあるかと言われると、答えにつまってしまいます。
作画の方は大変評価の高い方のようですが、
なまじ丁寧かつ美しい絵であるが為に、「陰獣」という作品の持つ匂い立つような陰気を薄めてしまっているように感じます。
そして何より大問題なのは、本作の結末。
こればっかりは「蛇足」ただその一言です。
調べたところこういう結末の版も一部・一時期あったようですが、
「それ」が明らかにならないからこそ、「陰獣」は「陰獣」たりえるのですから。
ともあれ、往時の挿絵のような画風でまるまる一作品読めるという点は魅力です。
「乱歩の中でも陰獣が特に好き」という方は、読んでみるのもいいかもしれません。