ヒロイン(伯爵令嬢長女アマンダ)は平凡な容姿、実妹(次女アデライン)は非凡な美しさ、実母から差別的な養育を受けて育ちます。当然のように、周りも姉妹を比べて評価し、心無い言葉。
ヒロインはわずか10歳で実母から「我が伯爵家は、妹のアデラインが婿をとって継ぎます。なんの取り柄もない貴方は働きに出て、育てられた恩を少しでも返しなさい」と言われ、粛々と将来の自立に向かって準備を進めます。
まだ入学したばかりなのに、ひと学年上の試験対策本までも作成、図書館で売るなどし、資金を貯めます。そんなヒロインに声を掛け、図書館勉強仲間になるのが、キラキラした貴公子(公爵嫡男フレディ)、ヒロインは最初、貴公子が妹目当てかと思いますが、そうでもなさそうで、3人で仲良く過ごし、貴公子が卒業してからも、何かと誘いが来て3人で出掛ける仲でした。
姉妹の目的は毒親からの独立。寮付きの就職を得る為に、勉強に励み、ふたりで励まし合い、助け合います。実妹は姉の長所の理解者で心酔しており、その妹からの愛がヒロインの心を支えます。そのふたりを見守る貴公子。いよいよ実妹が卒業を迎え、姉妹は長年準備して来た計画の実行に着手するのでした。
ヒロイン、常に心の平穏を保っていますが、本音では悲しくない筈がありません。実妹も、姉を引き合いに讃えられるのが辛く、傷付いています。
キラキラ貴公子も本心を吐露しませんが、妹目当てでないのは明らかです。ヒロインは随分と人柄の良い、面倒見のいい先輩と思っている描写ですが、自分が恋に落ちない様に、最初から自制していても不思議はありません。傷付くのは最小限にしたいと用心しているかもしれません。そんなふうに記載はありませんが、乙女心あるあるではないでしょうか。
ヒロインは逆境に、悲嘆にくれることなく、出来る努力をする賢明な人。優しさもありますが、ただ踏み付けられて一方的に泣き寝入りに終わらせない強さもある人。だから不平も漏らさず黙って努力する姿に、力を貸してくれ、支えてくれる人達がいます。見ていない様で、見ていてくれる他人の温かさが、この作品の魅力です。
まだ10代の姉妹が、逆境を乗り越えて、自分の道を進もうとします。幸せを掴んで欲しいと願ってしまいます。