web小説もあるので読了しましたが、第一段階の山は越えたものの完結していません。王妃視点、王視点と切り替えての描写があります。
12歳のティルダは、1ヶ月前まで敵国だったアシュケルドに嫁がされます。しかし父王がティルダの亡き母の姿絵を事前に送り、花嫁の年齢詐称をしていた為、王である23歳のカーライルは、子供と婚礼を挙げるという屈辱に耐えなくてはならなくなり、怒りに震えます。
ティルダを子供扱いし、妻として認めず、婚礼直後から城代にティルダの世話を丸投げし放置、6年経過。そこからこの物語が本格的に始まります。
ティルダは妻として、蔑ろにされた為、辛酸を舐めることに。一度殺されかけ、日々の食事にも事欠く始末。王妃視点のパートは屈辱と忍耐の中、自分を奮い立たせる辛いものになっています。
王視点では、建国したばかりの政情不安に忙殺され、王妃に悪意がある訳では無いのが語られますが、やっぱり言い訳がましく読者には聞こえます。
一番悪いのは悪意の父王で、カーライルの怒りも理解できますが、罪のない12歳の少女を追い詰めた責任は免れません。短慮で薄情の度が過ぎて、いろいろある事情を聞いても納得し難い。
孤立無援のティルダはそれでも策を弄し、敵を陥れ払い除けます。その上、同じ轍を踏まない為の防御策まで講じていました。6年も経ってから全てを知った王カーライルは、ティルダの知略に恐れを抱きつつ、その得難さにも気が付きます。それに18歳のティルダは自分好みの女性に。
6年目の出会いが面会の2度目とは、いい加減にしろ!と言いたくなりますし、ティルダは冷ややか。しかしカーライルの方の切り替えは早い。落ち度を認め謝りつつ、図々しくもティルダに求愛を始めます。
「気に食わない男を断罪したい」「傷付けた女をそっと解放するのが筋」一般人でない王族のふたりはそうは出来ません。建前や感情を犠牲にしても実利を取らなくてはなりません。
ティルダは笑顔のない女性になってしまいましたが、内面は思慮深く、自分のプライドや名誉を犠牲にする勇気の持ち主。亡き母から繰り返し教えられた「為政者の責務を果たす事」を、何より大事にしているのでした。
ティルダに比べるとやや情けないカーライルですが、彼も為政者として優れ、ティルダを理解し愛します。都合がいいな…と文句の一つも言いたくなりますが、最後よければ全てよしというところです。