原作も読みましたが、テンポよく進み、面白いです。ヒロイン(前筆頭聖女ミシェル)は王太子アルフォンスから、婚約破棄され、それならばもう自由に過ごそうと出て行く直前に引き止められ、王命で『好色侯爵』と噂されるヒーロー(クリストフ)へ嫁ぐことになります。
ヒーローの方も悪評高いヒロインを警戒し、書類に視線を落としたまま「王命だから仕方なく結婚するが、お前を愛する事は無い」といきなり宣言します。しかし顔を上げヒロインの顔を見ると、頬はこけ隈を作ったやつれ姿に、悪評が誤りであると理解します。それでも女性恐怖症であるヒーローは、2年後には別居する前提で契約結婚について互いに合意し、5歳の子息ジェレミーの養育も不要と伝えます。ヒロインの方も気を悪くすることもなく、むしろ父子に配慮を見せます。
ヒロインは気取らず自然体で、それでいて思慮深く優しい女性。まずは子息ジェレミーが物怖じせず懐いてしまい、その触れ合いを通じてヒーローとの触れ合いも増えていきます。やがてヒーローは、自分の心に今までにない感情が芽生えて行き…以下略といった王道ストーリーです。
まずヒロイン、鈍いです。子息ジェレミーからも早熟な好意を寄せられ、義兄からも兄妹愛だと言い切れない疑惑の好意を寄せられていますが、案の定です。ヒーローの方が自覚が早いのですが、ご多分に漏れずです。しかし、いつまで鈍いの?伸ばし過ぎぃ~とイラつかされる事なく、適切に進むのが小気味よい。
婚約者だった王太子は、おバカさんですが、悪人ではなく、その他の報復される覚えのある人達への断罪も苛烈ではありません。個人的にはあまり苛烈な断罪は心削れるので、マイルドなのがむしろいいです。
ヒロインの環境が好転していき、大事な人達から愛を注がれるサクセスストーリー。安心してほっこり出来ます。