目元と衣装以外にエジプトを思わせるものはなかったが、恋を知り恋に生きることを軸に、王子や王女の婚姻と相手の身分の問題が障害として立ちはだかるストーリー。綺麗に克服させていてまとまりを感じるが、その分スケールは犠牲となっていた。このとき作者に与えられていた頁数の制約がきっと、これ以上の弾みある展開を許さなかったのだろう。
地味な印象のコミックスになってしまい、人物が動き出してくるような躍動感は物足りなかった。
しかし味方になるお兄さんたちがなかなか嬉しい存在で、そこは、目指す大河ナイルをバックにするドラマを創った割には、壮大さよりも温かみあるお話。
二作目の王とメリエトとが互いに相手に抱く想いというのが、もうちょっと読み手の私に、行動への理解よりも、心境への共感みたいなところで味わいたかった。
決して悪くはなかったけれど、大負けのギリギリ4.5で5つ星としたい。エジプトはロマンを感じさせる国で、医療・土木・信仰など古代に既にいろいろ進んだ分野を多く有し、遺跡の現地解説にただただ感服した覚えがあるが、エジプトらしさという雰囲気が描写にあまり入ってないと思う。もう少し小道具など、視覚的な背景を見せてくれても良かったように思う。