牧場らしさもお金持ちらしさもない。絵はあるけれど生活の背景的描写にもっともらしい感じがしない。
ヒロインは信用されてない上に、気を引くそぶりなどしてもないのに再婚はしないと一方的に宣言される。あれでは、私なら、ただ子供たちを可愛がっていただけなのにと、猜疑心を持たれたことに憤慨するだろう。
子供の事に口を出すなと言われ、おまけに、職務怠慢で感じ悪い同僚が雇い主のお気に入り女性の立場でふんぞってる。ヒロインはわけありで来ているからメンタルヘルス上最悪の職場環境。
これで我慢などしてるヒロインには、じれったささえ覚える。秘書学校で首席卒業だったのなら他の勤め口を探した方がいいと思えるなかで、両人互いに意識し始めてしまう。そこは人の感情などわからないものだ、と片付けることもできようが、彼の動き出した気持ちはブレーキがかからない。
それだけで雇用関係のお約束を自ら破っていることになる。
くどいくらいに釘を刺してきた。なのに自分で禁を破ってしまうギルにヒロインは甘い。言い訳もなければ、反対に非をなすりつけるのは、約束事云々以前になんだか卑怯。これで、去ったヒロインを迎えに行ってプロポーズで顛末を締めくくるのは、なんとなくヒロインの恋する気持ちに助けられ過ぎに見える。
今まで知らない部分が大きかったからこそ、相手への信頼を時間をかけ醸成するといったような描写がないと、消化不足感を残す。
布教活動中に起きた事故というのもヒロインの過酷な境遇を想像できるようになってない。彼女の保証人への疑惑、彼の父母の家族問題、こうした未解決の課題を、とにかく結末に向かって最後の帳尻合わせをしておいた、みたいに思えて、しっくりくるようなエピソードになりきれていない。
この話は、弟さんのジョンのほうが断然素敵で。その分、ヒロインがお兄さんに惹かれていくことを納得するプロセスが物足りない。
2.5の端数繰り上げで。