デュ・ラック公爵家の伝説を背景に 神秘的な要素を盛り込んでラブストーリーは始まった。ヒロインアンドレアは、亡き夫でランスロット研究者リチャード教授の遺構をまとめるべく城に滞在し、息子ヒーローランスと出会った。アンドレアとランスのそれぞれの事情を後回しにして 2人の間の変化を前半部分で細かく描写し ロマンスのトキメキと 優しさや、穏やかさ を軸に進展していき私もウットリと読んでいた。だが、物語はそれで終わりではなかった。ランス父の再婚は ランスにとって地獄の1丁目だった。父親を悲しませたくはないという思いの強さが彼を追い込み、体にも心にも大きな傷を残す結果となってしまっていた。前半部分に比べて後半は手拍子のような速さで展開する。これは、前半のアンドレアとの出会いがたったの3日しかない事から、なるべくゆっくりと展開させることで感情の変化を見せたかったと思われ、後半は、前半で築き上げた絆や信頼を基にして事象の解決に功を奏した という形にしたいのだと思われる。分からなくも無いし、それで楽しめたのも事実だけれど、「恋に時間は関係ない」けれど、「信頼からの絆」は時間に大いに関係すると考えているので 私には違和感を残した。少なくとも 夫の生前に出会いを設けておくべきだったのではないかと感じてしまう。事は、義妹の異常な執着と軍でのトラブルとを父親と分かりあうことで そこにアンドレアを配置することで、家族を作り上げることに成功していた。そして、子供を産み育てることを諦めていた2人の下へ授かった命の喜びは それぞれに違うものだけれど 特にランスは、実子として抱くそれに近い状況を体験する作りとなっていて その幸福感に私も納得した。