クルーズ中に思い付いたストーリーのように、なんとなくキレイキレイで片付いてしまったが、彼がヒロインを嘘つき呼ばわりしたのは実際無理からぬことだし、私には一週間正体がバレないほうが不自然で、しかも、いくらプレイボーイといえど航行中客と次々関係するのもあまりな展開で、あちこち驚く箇所あり。
片腕女史の動きも中途半端な立ち位置で、信頼しきれない。味方してくれているけれど。
ヒロイン、二日前倒しで下船して、遠くないところにいたのかすぐに自宅に帰って来て、お姉さんは余裕無さそうなのに乳飲み二人も頼まれ抱えていたから寧ろ良かった?
そして収入源はヒロイン自身が作らないと売れないもの。それでクルーズとは、いくら最安価格帯の船室でも、他に接触のチャンスがなかったとは考えにくいのに、よくもまぁと思う。
プロポーズを受諾するときのヒロインの言葉も、ヒロインはやはりこのストーリー全般のテーマのひとつは、嘘つき、だったのだろうか、と思わざるを得ない。
「あのときジュナがまっすぐ見つめてた先は/僕のもってる付属品なんかじゃなくて“僕自身”だった」
お金目当てに近づく女ばかりでも、よりどりみどりで日々女に囲まれている暮らしの彼が、ヒロインは他の女性とは違うと感じる。ある意味?それは、正直だった、と言えてくる気がする。
見知らぬ女性が、最も上等な船室であるはずの個室に勝手に侵入するなんて、従業員の手引きがあったとはいえ、果たしてこの船のセキュリティ教育はどうなっているのだ?
枚挙にいとまないストーリー中の不自然さが、気になってストーリーに酔い切れないでいた。
ヒロインが、関係の終わりを覚悟しながら、彼の誘いに応じる複数の場面は理解出来る。
海と月の光は、ベッドシーンでというのでなく、もう少しヒロインの見つめる美しさを共有したかった。
たまたまこの直前に読んだ、「数字と恋と王子様」の方が、率直なキャラで良い。タイトル付けが同じような印象で引き付けているのに、場所が船上という以外に特別感なし。
この話が、月の光や海の効果を二人の描写と絵的によりシンクロに見せてくれていたら、と思う。
そこにロマンチックなシーンをたっぷり見せつけてくれたら、些細な不自然さは気にならなかったと思う。
星は3.5だと思ってほしい。