離婚を決めていたエイドンとジル。飛行機事故によって記憶をなくしたエイドンは以前とは別人のような優しく子煩悩な夫に変わっていた。優しく微笑むその顔に言葉にジルは「好きになっていく」と作中に表されているが、私にはそれが理解できない。冒頭にあった「わざとそうしたのか」「君の文句は聞き飽きたよ」というセリフからもジルは、夫への愛情と夫からの態度に傷つき疲れていたはず。それが、記憶をなくしたからと言って優しく変わった態度を見るたびに湧いてくるのは憎悪ではないのかと考えてしまう。いくらでも話し合ったはずなのに導き出されなかった和解案。それなのに今になってこれは何なのか、「好きになる」ではなくて「怒り」なのではないのか?愛情がなくなって離婚するわけではなかったとしても葛藤はあるはず。けれどジルからは戸惑いしか感じない。記憶をたどるようにオフィスへ行ってみた場面でも思う事だが、ジルはエイドンをどんな男としてみていたのか分からない。優しい子煩悩な夫となりそうな男には見えない。それよりも冷静で寡黙な仕事人間にオフィスでは見えるのだが。エイドンが子供に対して好ましい態度が取れていない理由は読んでいて理解はできたけれど、HQなのだから子供を絆の中心に置くのではなく”子供を授からなくても君が欲しい”位の二人の間の「愛情」の葛藤を描いてほしかったと思う。