情熱の三日間が生んだ結晶を、HQあるあるストーリーで彼は知らされてなかった。突然知らされても急に父親気分になれない。
無理からぬかと思う。最初から知らされても、全く自覚の持てぬ男性は結構いる。自分の身体に異変もないから、生まれた後も父親として未熟者は居る。
まず、いっときの王子さまのお戯れではなかったことが第一番の救いなのでは?そして、ヒロインに執着して、お節介なくらいに甲斐甲斐しく、身の回りの準備を手伝うなど、妊婦としては、楽させてもらえてると、私なら割りきるところだろう。
無論、ありがたく思えないのであれば、それは迷惑、あるいはそれ以上の、苦痛とも言うべきもの。ヒロインは、男性のその行動の中に、苦悩の少女時代の影を連想させられるために、彼のやり方に反発する。
少女時代の親兄弟からの暖かみのない育てられ方に、あれくらいの謝られ方で済むとは、主人公が納得しても当方が解せない位だが、不器用な男手の養育として過去の行きすぎを認識してもらい、或いは少々の正当化もされて、物語で最もウエイトを占めていたヒロインの長年の怯えが片付けられた。
ヒロインは彼に厳格すぎる父の影をことあるごとにダブらせていたが、色々買って出る彼の「義務感」の表現方法はひねくれがない。親切の押し付けがましくしはあっても恩着せがましさはない。おおらかな接し方にも受け取れる。寧ろ度量の大きさと神経の細やかさを備えているからこその活発な支援行為である。こそこそせず、ヒロインへの関心も真っ直ぐで、頑張ってる感が出ている。
彼は目覚めの遅かっただけの、ただの良い父親だ。ヒロインの実父は、彼女の大切な妊娠期に至るまで暗い影響を与え続け、二十年以上もよき父になれて来なかった。
父の自覚が醸成されて出産には間に合ったヒロインの彼とは違う。父親役の体得について、子に対する愛情豊かな接触の姿勢について、対照的でさえある。当初だけの無自覚と、20年超のはき違えと。
罪の重さがまるで違う。
ヒロインの性格形成に決定的にのしかかった、負の男性観。しっかり者のがんばり屋になった、といったメリットにもなったが。。。
シークの両親がもう素晴らしくて、孫をめぐるヒロインと両親の描写には涙を誘われた。
シーク物なりの王族的気質や富裕層的旺盛な購買行動あるが、基本的にシークも一個の男性として、自分から求めて動いた女性との物語。