これはラブ優先、何を置いても結局ラブストーリーで、全て退けたハピエンで。
そうなんだけども、いろいろなことが、そのときどきの価値判断でないがしろにされてきた。下された判断にはそれなりの理屈は付いてるんだけれども、なぜか決着して揺るがない、という強さに対する何とも言えない一抹のわだかまりが残っている。
7年前の別れ際のいきさつ、空港のやりとり、王位のこと、これをあまり後出しじゃんけんぽくしない工夫をしておいて欲しかった。どうも、どこか成立の危うさを孕んで話が来てしまった、そんな気がしてしまう。
中東の王国舞台で、皮膚の色と服装だけソレっぽくしてあるが、その情緒がにじみ出ていない。
出会いも別れも、再会もお出かけ再開も、何となく説明されて済まされた感覚。そして、無限力とは?
それもよく分からない。
彼、プロポーズは雄弁だったが、もっと前から必要な言葉のやりとりを、最後の最後にたっぷり持ってこさせる作者の構成には疑問が。それは原作の作りのほうの問題か知らないが。
ヒロインもヒロインで、嫌われたくなくて、都合のいい女でいいから、という感じがあったのなら、あとからやっぱり本当はずっと、っていうのは、これ、彼のみならず読み手も言ってくれなきゃわかんないよ、という世界。
これは、エドワード8世の生き方に着地を定めて、中身をあとから考えたみたいに、中間のエピソードが白けてしまう。
「熱砂の烙印」をまた、読もうかなぁ。