骨格は元サヤに収まる夫婦の話。長期別居状態が、国際問題化しそうだった拉致未遂事件をも経て、万事解決などというレベルを越える果実をもたらした(一件落着後のデザート濃厚さで私には蛇足感)。
型破りといっちゃ型破り。職種も職場、夫婦の再会理由もありふれてはいない。山を2つ潰さず、一個で済ませてより深く掘るとか、なんだか、深海誠監督の大成建設CM「地図に残る仕事」を思い出してしまった。全然現場人間の雰囲気が違うし、プロジェクトとの関わり方も何も共通点が無いのに。
夫婦仲の修復は実質1場面、ヒロインが語る生い立ちのところだけ。知らなかった、と、そこで彼が反省するなど、どちらかと言えばイージーな展開。こと二人の関係の改善要素描写は普通。舞台装置がただ大がかり。
アラブ系のやり口は堂々と動きすぎていて、管理強化監視厳格な今からは考えられない。007の初期でも流石に無い無法。しかし彼らの存在やら、空路空港飛行機と、巨大な大道具は話の大規模化に一役。
妻たるヒロインも彼の背中しか見てなかったのに、赤ん坊の育児をナニーにも彼が任せてないということが、ピンと来ない。赤ん坊を物語の小道具として扱っている感があり、子連れ狼じゃあるまいし、危険物取扱を業とする男の傍に置くことで、キャラを膨らませる為だけに置かれてる気がして、素直に受け止められなかった。子供の教育問題は世界中飛び回っているのに、どうするんだ?
それにしても中国が舞台とは珍しい。
絵が強く線が多くて、外見全てが流水先生路線ともいうべき傾向を待っているが、こういう外交処理を出してくるような肌合いのストーリーには、合ってると思わせる。
珍しさで引き込む語り口が、流水先生の、人物の感情描写コマ多用と、表情描写の読みにくさのある絵との相乗効果で、意外にサスペンス入る前から、緊張を感じてしまっていた。ひとがいいんだか冷たいいんだか、快く思ってるのかいないかもしや怒っているのか、分かりにくいキャラ。先を見えなくして、いい効果。
大切なことを言わないのは、言おうとしないのだけが悪い訳ではないだろう。聞こうとしない、或いは、話す気にさせないこともまた要因なはず。
その夢は初めてなのだろうか?
頼めば来てくれたのは結果論であり、世界的に名高い専門家なら、ほっぽり出せない様なプロジェクトの可能性もあった。よりによってそんな案件に因縁が。