中盤以降はベタにストーリーが終息に向かう。それまでに登場人物全員の人柄の良さが溢れる。愛情深いやり取りが却って、それぞれが心から現状にこれでいいとは思っていないという、互いに思いやるがゆえの何処か悶々とした日々の描写。
ヒロインのビジネス上の信条と、叔父の保護者ぶりに叔父の人生を狂わせている気がする子どもなりの気がね、姪想いの純粋な彼の行動力が、ひとつの家族のような歯車として噛み合うようになる大団円まで、相手のことをよく考える3人。早合点もしないで、着実に深まっていく関係。
原作を私は読まないため、原作の発表時期やそこに描かれた年代と照合しないが、作品で使われたプロポーズの手法は80年代に流行した。広告業界人の設定の彼の取ったやり方として先端を走っていることとするなら、ヒロインが、泣く泣く養子に手放した70年代は、確かに、十代の妊娠が欧米で問題視されていた頃。反対に、ヒロインが、当時としては、女性の細腕でカーディーラー最大手の一角に位置しているのは、相当男勝り扱いされたはず。
その時代で彼が、また、ヒロインの親友夫妻が、ヒロインに暖かいのは、いかにヒロインに心を通わせているか。そこも話の本筋ではないにせよ、ちょっと人の心の美しさ素晴らしさを感じた。