かなり、地味で 鬱陶しいくらい焦らしてくれる物語でした。が、ヒーローダニエルもヒロインレースも実は、お互いが持っているお互いの印象とは 真逆の人だった。各々が気になる存在であるにもかかわらず それを否定し続けるのには 各々の家族の事情が絡んでいた。ダニエルは父親の影響で、レースは母親の影響で。それは、子供としては1番の教師であらねばならない存在の不在が招いた結果ではあるが、気の毒な状況に変わりはない。それでも2人は そんな親とは決別して線引きができている。幸か不幸かこの事がお互いの印象を決めつける要因となった。だから、それを知った時両者とも そういう事ならそれを利用して 足掛かりを作ろうと試みた。ここが、この物語の本質で面白いところ。派手なロマンスではないけれど、子供ではないという一風変わった関係の持ち方に 相手をどう取り込んで本意を遂げるかが描かれているのだ。意外な真実に驚いたのは両者だった。「騙した」のはどちらか。「卑怯」なのはどちらか。どっちもどっちだろうと 私はほくそ笑む。心がそこに無ければ、お互いしたり顔で罵る場面だが、切り捨てられない思いが繋がれていた。出来る事なら、1ヶ月という間を置くのではなくて、もう少し目線の絡み合いを作って、ドキドキを読みたかったが、男だから、女だから という不自由さを取っ払ったところにある 女でも、男でも という自由さを「愛」という名のもとに 読みたかった。