男性が美しいと思っていた女性が、以前と変わったらその男性は、また女性は、どう思うか?
また、女性が、守ってくれると思っていた男性が病気になったらどう思うのか?
この問いかけは自分の心にも難しい。きっと、世の中でもこの問題に直面して乗り越えるカップル多いと想像するが、愛し合う二人の人生の屈折点にはなるだろう。
ストーリーは、大きな事故を乗り越えられなかった其々の過去を持つ二人が、互いの痛みを知り心の傷から救いだすというもの。その辛い経験あるゆえに現在の生き方考え方をするようになっていたが、互いのその人生最大の試練は、異性観を変質させていた。拒絶に向かわせていた。
しかしこの話は、まずヒロインもだが、その前にかつての恋人が、とそしてこの彼アレックスも、そもそも「美」に大きな比重がある。ストーリーとして美しい話でもあるけれども、シビアな対立軸が話には含まれる。女性なら思う自分が少しでも美しくありたい気持ちと、それを打ち砕く、抗えない自然界の偶然の遭遇で以前を取り戻すことのできない現実と。考えるほどに実は深淵なテーマに感じてくる。出会う人によって、また、出会う順序?、タイミング?、個々の経験とが作用しあって、ストーリーは、この二人が互いに相手を最も理解し合え、相手を美しいと思える者同士とした。
丁寧な作図が、テーマである「美」を裏切っていない。
海洋生物の危険や恐ろしさは、いくら重要でも主旨とは言えないため、ヒロインの研究熱心さや、事件のトラウマの深さの描写で手際よく間接的に示されていて、むしろそれにより二人の理解と接近が相対的に前に出てきていて良かった。
小さなことだが、アレックスの元婚約者に見下されたと感じたための、対抗意識やらその彼女をあっと言わせるためのパーティでの御披露目やら、「美」にまつわるこまごましたエピソードまでもがこのストーリーの骨子に忠実で楽しめた。