私も含め、大抵の人は常に死を意識しながら日常生活を送っていないけれど、キラ君は違う。幼い頃から身体が弱くて、病気によって余命が1年だと医者に宣告された。1年というのは目安だけれど、未来がたっぷりあると思って生きている高校生達よりは、確実に時間がない。少女漫画の高校生モノは、40代半ばのオバサンには少々ノリがキツ過ぎることも多くて滅多に手を出さないけれど、こちらは何となく試し読みして、恐らくハピエンだろうけれど、命をテーマにどんな描き方をするのか気になって全巻購入。
3巻までは本当に読みにくくて苦しみましたが、そこを乗り越えたら坂道を自転車で颯爽と下るかの如く、一気に最後まで読めてしまいました。最初はどのキャラも苦手でしたが、途中からは少しでも彼らの話を読みたくて、巻末に「近キョリ恋愛」の番外編が収録される度にイラッとするくらい、みんな大好きになりました。
3巻までの読みにくさは、主人公とその家族が独特だったのとか、シリアスの中に差し挟まれるヌルい笑いが微妙だったのとか、どういうテンションで読めばいいのか戸惑ってしまったからなのですが、そんな私のモヤモヤを吹き飛ばす勢いで、どの瞬間も見逃すまいと噛みしめるように生きるキラ君の何気ない言葉が、私の心をグワングワン揺さぶってきて、読む手を止めさせなかったです。キラ君を大切に思うキャラ達が、キラ君と共に死と向き合う中で、私自身も考えさせられました。
そしてもう一つのモヤモヤ吹き飛ばし要因は、「先生」と呼ばれるオカメインコです。主人公のニノンが小さい頃拾ってきて飼っているペットなのですが、ニノンの師匠でもあります。関西訛りで饒舌に話す先生は、自力で人間の言葉を習得した賢いインコ。ここだけほんのりファンタジー入ってますが全く不自然さは感じず、むしろ先生がいなかったらこの物語は成立しないレベルの重要インコです。「やっぱ読むの止めよっかな~」ってなった時も、先生見たさで乗り切ったと言っても過言ではありません。ラスト近くの先生の振舞いは最高にカッコ良かったし、涙を禁じえませんでしたが、先生のお陰でこの作品を読むのが100倍楽しくなった気がします。
十代の子が読めばリアルに感情移入できるだろうし、それ以上の年代の人でも原点回帰できる素敵なお話だと思います。読んで良かったです。