ボディガードが手を出しちゃった話。ベタにそれは守られる側は惚れてしまうシチュエーション。ルックスも良いなら、素敵に見えない方が天の邪鬼。絵に描いたように恋に陥りそうだ。やめなくては引かなくてはと思い留まろうとしながらも、恋に落ちても不思議はない。
しかし一般的にいって、それ、彼は職務的にどうよ、との疑問詞も浮かぶ。ちょこッと禁断風味が入ってスリリングな筋運びにもうひとつ興を煽る感じ。
破天荒展開がリアリティを完全に消し飛ばすので、そういうものだと思えばそれはそれ。その中で彼らの理屈に沿って思考すると、ヒロインと彼の動きは、帰結に向かって破綻回避。
誰も信じられない、誰が犯人か判らない、そんなときに信じられるのは身を呈して我が身を守ってくれる人。このストーリーは、一見どこまでも作り物の世界で、緊迫と極限の状態の時、惹かれ合う男女が自然に進む本能的関係、狭いところから出るわけにいかないときにとる純粋な行動と、究極の選択をする決断に迫られているときにとる行動とが、語られる。リアリティに一番遠そうなこの作品に、そのバリバリのフィクションぶりに、これは、もしかしたら人間の真実とはむしろこうなのかもしれないな、と思わせる力が見えた。
巻頭は綺麗な色遣いなのに、時々子どもっぽく見えるのと、ボディガードが幾つかの場面で同一人物に見えにくいのが、少し勿体ない。
作品集で読んだが、個別感想をここに記載。