「蔑まれる」事に耐えているアントーニア。それを黙認するマルコ。物語の大半はそれを理由に諍いばかりを描いている。すなわち、2人の間には信頼という絆が出来ていない。関係が始まって1年の間に、マルコはアントーニアへの愛情を足掛かりに彼女を知り、先に書いた「信頼」を築き関係を進めるというシナリオを持っているように見えるが、アントーニアにはもっと「何か」を具体的に示してもらいたがっているように読める。マルコはアントーニアの背景を知りたがっているのに彼女は話さない。このやり取りにうんざりするが、実は彼女も真実を持っていなかった。社交の場でマルコの母親に無視されるという侮辱を受け彼女自身も自分自身と向き合うこととなる。ここにきてようやく、アントーニアがマルコに求めていた「何か」は、彼女が何者でも一生愛し続けるという姿勢だったのだと分かる。マルコ自身も腹をくくるのが遅すぎるが良家の子息たる所以か。「身分違いの男に恋をしてキズつくのは母親譲りか」とアントーニアの自虐には涙が出るが、彼女の実父の話しにも涙なしではいられない。当然ハピエンを迎えるが、私としては「公爵だろうが国王だろうが知ったことか」はもっとハッキリ示してもらいたかったので-1。