彼はヒロインの事を知っている。彼女の心の内以外は。
「わがまま」が更に、とは、最初(最初で「最後」の)のわがままのあとに知らされたお祖父様のことは、もうよかったのだろうか。覚悟を決めて期限付きで臨んでいたのに、あれは一体なんだったの、という感じ。深夜の帰路だって危険は変わってないだろう。
理由を理解しても、わだかまる。
はじめに確かめにいった、彼のその行動を突き動かしたものは、何だろう。彼が収集している情報量に驚かされるが、彼側に他の人たちの気配が全くないのも、どうも説得力が弱い。生い立ち関連のところも差し挟み方が唐突に感じた。
両人の心の表現が状況説明的。
シンガーとしての才能の活かし方がもったいないのも、少しだけ引っ掛かる。この話の主旨は何であろうとも、まるで、女は独身時代に少しばかり自由があってもいいが、結婚して家庭に入れ、と、裏の意図でも隠してるかのような、そんな穿った受け止め方もしたくなってくる。
王族の結婚物のストーリーでありながら、王女も王子もあまりそこが感じられない。
髪を整えなくっていいのかとか。外見に荒れを感じる。
両国共公務のほうは上の世代だけがおこなっているんだろうか。王子、王女、としての仕事はやっていないようだ。
なんにしても、ヒロインは結婚することになっている相手のことを知らなすぎる。いくら政略結婚なのだとしても、相手も政略結婚承知ではお互い様だ。徹底してよく知らない設定は、ヒロインの姿勢が、相手に対して失礼だし、国のためお祖父様のためと言いながら不誠実だ。これもひとつの「仕事」と割りきるのなら、余計に。
再三再四の置き手紙は、いつも一方的に物事を進めていて説明力は補えるが、手紙の受取り手の心情描写フォローが欲しくなる。直後に見せなくてもいいから、どこか表現されると王女の振り回し感を変えられるのでは?