作者のもう一つの故郷イタリアの料理を中心に、引越し先のポルトガル料理や懐かしの日本の味にまつわる、愉快な体験談が紹介されている。
この本に登場する料理の大半は、いわゆる「地元の人が毎日つくるような料理」である。「郷土料理」以上に手軽で簡単な…日本でいうご飯に味噌汁といったところだろうか。高級料理とはまた別に、そういう素朴な料理になんとも惹かれてしまうのは何故だろう。地元料理の大雑把さと優しさ、その料理を作る人、食べる人のたくましさと朗らかさ。作者はこういった優しい雰囲気をくみ取って描くことがとても上手いと思う。
各話にはそれぞれのエピソードで登場した料理のレシピが載っている。外国の「普通の食卓」に思いを馳せつつ、チャレンジしてみたくなるものばかりだ。