このレビューはネタバレを含みます▼
生ける屍、異形の身の苦悩というものは日野氏が何度も繰り返し描かれてきたテーマであるが本作はその集大成の一つでありながら大きな変革点でもあると思う。
それまでは己の非業を嘆き、或いは狂っていくばかりであったこれまでの異形たちとは一線を画するところ、それはゾンビマンが警察官であるということである。
死して、朽ちて行く身体でなおも心のなかに思い続けるのは家族への愛と警察官としての使命感
作中の狼男との対決は、失礼かもしれないが氏の作品とは思えないほど格好いい構図であった。
「残念ダガ弾丸ハ全テ銀製ダ」「私ハゾンビダ二度ト死ヌコトハナイ」
ベタだが本当に格好いいセリフで、氏の思わぬ一面を見せてもらった感があった。
願わくばもう少し魔界の者とゾンビマンとの対決を見たかったのだが、王道のストーリーが気恥ずかしいのか、あくまで短編であるからだろうか
早々に氏の作品の中で多く見られる「異形の者の最期」に落ち着いてしまうのであるが
ゾンビ(異形)の警察官というある種創作の中ではありふれた存在をここまで印象的に描けるのは氏の実力と重ねてきた年季の為せる業だろう。
是非ともゾンビマンにはその身体朽ちるまで、人々や愛する者、志を同じくする同僚たちを護ってもらいたかった。