作家としての引き出しの豊かさをそのまま形にしたような作品
仮想世界と現実を往還する恋愛譚では、人間の感情の奥行きを軽やかに描き出し、刑事モノでは経験を積んだ筆致が息づいています
さらに『ギャラリーフェイク』の読切を収録することで、既存ファンへの贈り物のような趣も漂う
一見ジャンルが散らばっているようで、通底しているのは「人間を描く眼の確かさ」であり、そこに作者の職人芸がある
細野作品特有の、軽快さの奥にある余韻が短編でも健在で、むしろ凝縮されている印象を受けます
短編集ながら、キャリアの集大成を小さなスケッチに刻んだアルバムのような一作