ベースとなっているギリシャ神話より発想し、生身の人間同士のままならぬ恋が描かれている。
知り合い、相手の氏素性も知らぬまま恋情を募らせ、そして再会のときは、つまりは相手の立場が判るとき。
妨害する者達が居て、両人それぞれ背負っている立場があって、とハラハラさせながらも愛を確信しあうという、私好みのロマンチックストーリーだった。
突飛な展開ではなく、愛の島との別名のあるキプロス島の伝承にもある程度添うものとして、また、ギリシャ神話風の昔のそれっぽい衣装や彫刻の描写が雰囲気を盛り上げていて、まとまりよく仕上がっていたのが良かった。ギリシャで今に残される夥しい彫刻群を思い返すと、作者の発想は如何にも古代ギリシャでは現実にありそうで歴史ロマンも感じた。
語りも適度な分量と対象年齢幼な過ぎずの想定読者への言葉遣いが、本作のクオリティを高めていたと思う。
短編の値ごろ感以上に、予想外にメインキャラ二人の、恋へのこだわりそれぞれを感じ取れて、結末の収め方がスッキリした。