村田京介という男を主人公にした暴力ものだ。普通の者にはできない死闘を安全な立場の中で痛快さを見させようとさせる、弱々しい読者のための一品だ。動物は群れて生きていく習性があり、それによって外敵から身を守り、互いが利用し合おうとする。更にその中にあって、自分の子孫をのこすために、自己を大きく見せようとする本能もある。人間も同じだ。ただし、人間には理性というものがある。しかし、その理性で本能を押さえつけるのは、並み大抵の修養ではできまい。人であるために、そこに葛藤があるのだ。世の中には色々な力がある。引力から磁力、風力、生命力、体力、気力、忍耐力などなど枚挙にいとまがない。武力、暴力だけは無い、なんていうことはない。問題は、それらを総て認めてどうするか、だ。地球が滅びるか、これらの問題が解決できるのか、という長い宿題でもあろう。