このレビューはネタバレを含みます▼
企業ドラマの枠を用いながら、人間の野心と誇りを鮮烈に描き出した作品
大佛の「伝説を残したい」という純粋な欲望は、かつての高度経済成長期の熱気を思わせつつ、現代ではやや異質な光を放ちます
熊代常務の存在は師であり導きであり、彼の言葉一つが大佛の志をさらに燃え上がらせる
北京での交渉劇は、ビジネスが単なる数字のやり取りではなく、文化や欲望のぶつかり合いであることを示して鮮やかです
同時に、日本人同士の確執が描かれることで、組織のもろさと人間の業が浮かび上がる
「伝説」を追い求める姿は、若さの無鉄砲さであると同時に、働くことの根源的な歓びをも映します
細野らしい緻密な取材と軽快な筆致が、重いテーマを読みやすい物語へと昇華させている
これは、商社マンという特殊な世界を超え、「働くとは何か」を問う普遍的なビジネスロマンと言えるでしょう