このレビューはネタバレを含みます▼
コインロッカー出身という衝撃的な出自を背負いながらも、空野トキオは陰を引きずるどころか、逆境をエネルギーに変えてしまいます
浮浪者たちに育てられた彼の奔放さは、既存の教育や常識を軽やかに飛び越え、担任教師・丸井正男の「正しさ」を軽妙に揺さぶる
ここに“制度と自由”という軸が生まれる、、、
街角で磨かれた即興的な身体能力と、チームスポーツの規律との摩擦は、ただのスポーツ漫画にとどまらず「人が人に混じって生きること」の寓話へと広がっていく、、、
そして、ヒロイン・高野みやこの視線がまた鮮やかです
彼女が見いだすのは、トキオの野性的なプレーだけでなく、彼が背負ってきた“青空のような孤独”
ここに青春のときめきとほろ苦さが絶妙に織り込まれます
本作は、昭和の都会に生まれた“サッカー版ターザン”であり、同時に人間の本能と社会の枠組みが出会う場を描いた瑞々しい青春譚
細野作品ならではの軽妙な筆致と温かいまなざしが、読む者に「常識の外側にも未来はある」と囁きかけてきます
グラウンドを駆けるトキオの姿は、読む者の胸の奥の空気まで澄み渡らせる、まさに“ふろっぴぃ(風のように軽快)”な読後感