コーヒーショップに入り飲み物をゆっくり飲んで過ごすように、一冊読んで一人楽しむひととき。そんなとき、手に取るのに最適かと。
素敵な人を好きになり、相手もまた自分を気に入ってくれて、それで結構十分なのに、嵐ならぬ大雪の日に二人で足止めされて互いに、相手の存在に対する意識が高まる。日本の場合、嵐(花男は雪だが)。そこ、西洋物は雪なんだなぁと、変に、ハーレクインと少女漫画との基本設計の共通項に納得する。HQは雪の閉じ込め感が、少女漫画のどうするといった狼狽ぶりより巧くロマンチックさを使えてると思う。ターゲットの年齢層からは仕方ないが。
この作品も、互いを知るチャンスとして、雪カードが最大限使われている。
そして、これまで誰とも結婚を意識することのなかった彼をプロポーズに向かわせる。
こういうベタ展開に飽きを感じさせない手腕が流石!
そのベタな中でも最たるベタに、ヒロインの涙が溶け込んでいく。父と婚約者の死後夢中で走り続けてきたヒロインが癒されるシーンに、こんな人に出会えてよかったね、と思う。この頁あることで、ヒロインは張り詰めてきた気持ちをほぐせた。
「きみは充分がんばってる/誰も知らなくても 僕はわかってるよ/自分の悲しみはあとまわしに来たんだろう/胸の奥にしまいこんで云々」
唐突な胸の貸し方ではあったが、効果的な彼の登場だった。